映画祭物語『思い出そう 大切なこと』 第6章 シティライツ映画祭

映画祭ブログ担当 ながたです。

昨日は、本当にありがとうございました。

残念ながら参加できなかった方にも、ほんの少しでも楽しんでいただけたらと思い最後の章を書きました。 どうぞ、続きをお楽しみください。

13時15分
『素晴らしき哉、人生』の上映が終了した。
ロビーは、再び大声の案内が飛び交う。
14時10分
『奇跡』上映5分前
お客さま達の入場も大方終わり、ロビーはまた静けさを取り戻す。

案内板を持った笑子がホールに戻ってくる。
「あれ、あかりさんと松五郎は? はなさんは休憩?」
元気が、実行委員のいないことにようやく気づく。
「ショコラティエの容態が急変したの。」
佐緒里が事情を説明する。

「ごめんなさい、突然出て行ってしまって。」
あかりが松五郎、はなと一緒に戻ってきた。
「ショコラティエは大丈夫なの?」
エルザが心配そうに尋ねる。
「ありがとうございます。松五郎くんが駆けつけてくれたおかげで、危険な状態からは脱したって。」
はなが応える。

ボランティアスタッフたちは、それぞれ、映画や休憩室に行き、ロビーは実行委員だけになった。
「今は、実行委員だけかい?」音松がたずねる。
「ええ、そうです。」七海が応える。
「さっき、CDを売るための音楽が流れていたけどその再生機はあるかい?」
「ええ、準備が出来ています。」七海が一枚のSDカードを出し、再生機にセットする。
「はなさん、松五郎くん、いいかしら・・・。」七海が緊張した表情を浮かべている。
「やめてください。」あかりが険しい顔でとめる。
「ワゥ、ワゥ。」松五郎が鳴く。
「クラレンス!」あかりが一括すると、松五郎は黙り、静かにお座りをした。
元気は、何が起きたのかわからない様子で成り行きを見守っている。
あかりが、静かに話し始めた。
「松五郎は、もう話をすることが出来ません。」
皆が松五郎をみる。
「ショコラティエを助けるために、特別な能力を捨てたの。」
あかりが話しを続ける。
「松五郎の本当の名前は、クラレンス。『素晴らしき哉、人生』の2級天使と偶然にも同じ名前。そして、言葉をしゃべると言う奇跡の能力を持っていた。」
クラレンスが、あかりの足元に伏せをする。
「だから、今回の映画祭でも奇跡を起こそうとしていたのよね。」
あかりが、クラレンスを見やる。
「でも、今朝、全員で江島杉山神社にお詣りをしたとき。松五郎はその奇跡を願ったの。」
「私は、ショコラティエが元気になることを願った。」はながうつむく。
「でも、それは奇跡だったの。」七海が話しをうける。
「だから、松五郎、いえ、クラレンスは自分が持っている奇跡の能力と引き換えにショコラティエを救おうと思ったのね。」
「ごく、普通の盲導犬になったのね。よかったじゃない、クラレンス。」エルザが、うれしそうに話す。
「奇跡から生まれた私が言うのだから間違いないわよ。奇跡の能力なんていらない。ショコラティエも元気・・・。」一瞬元気を見る。
「元気になったのだから最高にHAPPY!」

「そうかい、良かった。」
「あ、そうだ。」笑子がひらめく。
「もうすぐ、新幹線がすれ違うシーンよ。実行委員の仕事もあと数時間、来年の映画祭の無事を祈らない?」
「それはいいアイディア。」佐緒里がうける。
その時、ホールから新幹線の音が漏れ聞こえてきた。
「さあ、願おう!!来年の奇跡を!」

第6章 シティライツ映画祭 おわり。

 

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