映画祭ブログ担当のながたです。
早速、お話の続きをどうぞ!
「えっ?、そのお話をご存知なんですか。」
笑子は、驚いてたずねた。
「えぇ、存じています。なので、ベルが鳴るたびにとても幸せな気持ちになるのです。」
「くぅーん。」その時、盲導犬が、人懐っこい様子で女性の足元に伏せをした。
「あら、松五郎、お仕事中でしょ。」女性は、盲導犬に声をかける。
松五郎は素知らぬ顔で、再び「くぅーん。」と鳴いた。
「まぁ、盲導犬なのに珍しいお名前ですね。」
「ふふっ。」
女性は、それには答えずに微笑むと、
「あなたも、天使のお話をご存知なのですね。」と、たずねかえした。
「ええ、何処で聞いたかは、忘れてしまったのですが、たくさんの天使が生まれるといいなあ、と思ってお店のドアにベルを付けたんです。ドアには羽根もディスプレイしているのですよ。」
笑子は、そう言うと女性の手をとり、ドアの羽根に触れた。
「まあ、ステキ。ベルにも触って良いですか?」
「もちろん!」笑子は女性の手をベルに添えた。
チリンチリン ベルが鳴る。
すると、松五郎が天使のクリスマス飾りをくわえ、笑子の足元にやってきた。
「えーっ、松五郎くん、すごい。」笑子は思わず大きな声を出した。
松五郎は、得意げな顔をしている。
「何があったのですか?」女性は心配そうな顔になっている。
「いえ、松五郎くんが天使のクリスマス飾りをくわえて来てくれたものですから、驚いちゃって・・・。」
「あの、商品ではないのですか?ごめんなさい。おいくらですか?」
女性の問いに、笑子は、
「お代は要らないです。これは、ご来店のプレゼントです。」と答えた。
「でも、それでは・・・。」申し訳なさそうにうつむくと、ハッとして顔をあげた。
「ベル、クリスマスベルを譲ってください。」
「ありがとうございます。」笑子は、お店の奥の棚から、木箱に入ったクリスマスベルを出してきた。
「こちらのベルは如何ですか?」 チリリン。 笑子がベルを鳴らす。
「素敵な音、こちらをください。」足元の松五郎も満足そうに鼻を鳴らす。
「ありがとうございます。」ベルを包み始めた笑子に、女性がためらいがちに話しかける。
「あの、初めて逢った方にこんなことを言った事はないのですが、もしも、映画がお好きだったら、私と一緒にお出かけをして下さいませんか?」
恥ずかしそうに俯く女性。松五郎は、エールを贈るように女性を見上げている。
「お休みの日だったら、いつでも。」
笑子は、この出会いに何か運命的なものを感じた。
<エピソード3> おわり。
次回から、第2章にはいります。