映画祭物語『思い出そう、大切なこと』第4章 素晴らしき哉、人生

映画祭ブログ担当のながたです。
さて、今日から第4章の物語がスタートです。
早速、物語をどうぞ!          

「字幕朗読って何ですか? エルザさんと一緒に?」
元気が、佐緒里と携帯電話で話している。
「ええ、お願い。ボランティアの方のオーディションや読み合わせ、スタジオ録音の世話役を担当して欲しいの。」
「あぁ、読むんじゃないんですね。良かった、大丈夫です。エルザさんも一緒だったら心強いし。だけど、お友達の白保さんは一緒じゃなくていいんですか?」
「彼女は、笑子さんとガイド作りのチームに加わってくれることになったの。」
「そうなんですか、わかりました。よろしくお願いします。」
元気は、電話を切ると小さくガッツポーズをした。
            
字幕朗読とは、外国映画などで日本語の吹き替え版が存在しない場合に、字幕朗読ボランティアが役になりきり字幕を読むことです。
現在公開中の洋画の同行鑑賞会の際は、ライブガイドと、最低男女2名の字幕朗読ボランティアが映写室に入って生で役になりながら読みます。ボランティアと言ってもお芝居の経験のある方が多いので、一人何役もこなせるつわもの揃い、変なテレビの吹き替えよりよっぽどリアリティがあります。それとは別に、シティライツ映画祭や岩波ホールでの上映では、あらかじめ録音をしてその音声をラジオから流します。 解りやすく言うと「吹き替え」なのですが、外国語の音声も場内には流れているので、やっぱり字幕朗読です。
確か、第3回シティライツ映画祭の『雨に唄えば』では、録音してある字幕朗読の音声に加えライブで字幕朗読もやりました。今年の『素晴らしき哉、人生』は、録音形式ですが、視覚障がいの仲間も多く参加しています。
           
「じゃあ、まず、オーディションのシーン選びからですね。」
田町の障害者福祉会館での実行委員会の席で、リーダーがエルザと元気に話している。」
「『素晴らしき哉、人生』のシーンで、老若男女や子供など多くの人がでてくるところをピックアップしましょう。」
エルザが、少し考えて応える。
「そのシーンだったら、もう思い浮かびます。元気くんは?」
元気は、びっくりしてエルザを見る。
「えっ? 映画は観たけどどのシーンと言われても・・・。」
「まだまだだねぇ~。」横にいた音松が笑いながら話す。
佐緒里もクスクス笑っている。
リーダーは何故か、うれしそうに微笑み、元気を見ると、
「じゃあ、元気君、エルザさんからどこのシーンかを教えて貰って、それが映画の何分~何分までか確認したら、セリフ起こしをして台本を作ってね。」と言った。
ギョッとする元気、しかし、更に面白いことが起こることを、彼はまだ知らない・・・。

     つづく

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