映画祭物語『思い出そう、大切なこと』第一章 出会い <エピソード3>

映画祭ブログ担当 ながたです。
桜がはらはら舞い、穏やかで気持ちの良い季節になりました。
今日から、エピソード3のはじまりです。

<エピソード3>

 「あ、その羽根は入口のドアにディスプレイしてください。」
 広田笑子(ひろた しょうこ)は、大学卒業依頼、8年勤めた会社を辞め、クリスマスショップの開店準備に大忙しの日々を送っている。
同期入社の仲間たちは、退職すると聞いて、てっきり寿退社だと思っていたが、起業という退職理由に皆、驚いていた。
鹿児島出身の笑子は、家が菓子店を経営している事もあり、ものごころついた頃から小さくても自分で何かお店をやりたいと思っていた。

 東京の大学に進学したとき、下北沢や原宿によくある、6畳一間程度の小さなスペースのお店を見て、「これだ!」と、心に決めた。
当時は、アクセサリーショップをやろうと思っていたが、どのお店も似たり寄ったりで個性が無いように思えた。
そして、たまたま雑誌で読んだ一年中クリスマスグッズを売っているクリスマスショップに目が留まり、
またまた、「これだ!」と思った。それから10年、明日、いよいよ開店。

 チリンチリン 羽根の取り付けが終わったドアのベルが鳴る。
「天使が生まれた。」笑子は、クスッとしながらつぶやいた。
何かの童話で読んだのか、誰かから聞いたのか忘れたけど、「ベルが鳴ると、天使が生まれる。」と小さい頃から信じている。
だから、ドアのベルが鳴るたびにとても幸せな気持ちになる。

「いらっしゃいませ」
お店に、盲導犬をつれた若い女性が入ってきた。
「あの・・・、ここは何のお店ですか?」
「クリスマスのグッズを売っているお店です。」

女性はうれしそうに微笑むと、
「ドアのベルの音が、とても綺麗な音で、天使が生まれた、と思ったものですから・・・。」
と言った。

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