音訳図書を読んでみて

こんにちはモグタンです。

今回は私が視覚障がい者となって始めて読んだ本を紹介しながら、
音声ガイド付き映画との共通点に想いを馳せてみました。

その作品はデービットローンというアメリカの作家さんが書かれた本で、
視覚障がい者が主人公となった3部作であります。
この本の思い出を軽くご紹介しながら音声ガイド付き映画とは?
に関する私の考えを述べてみたいと思います。

その3部作は
「音の手がかり」、「音に向かってうて」、「復習の残響」ですが、
主人公が誘拐犯を音で追いつめるという私には想像すらできないような
スペクタクルな作品です。

ちょっとネタばれですが、
第1作で誘拐犯を追いつめ、第2作、第3作では犯人からの報復を
撃退するという物でした。

身代金要求を伝える電話に混ざって届く周囲の音を聞き、それが犯人を追いつめ
る切り札となる。当時の私にはとてもセンセーショナルでした!。
視覚障がい者の生活に入ったばかりの私には真似できないと思いつつ、主人公が
日常生活で工夫している事を真似してみました。
すると意外にもそこそこできる事があるって判ってきたんです!
最も小説のように上手くも、スマートにもできませんけれども(笑)。

そうしたわずかな自信が徐々にではありますが積み重なり、私自身が視覚障がい
を受容できるようになっていった、そんな思い出があります。

ところで、私のごく親しい視覚障がい者の友人から聞いたのですが、
「おとけし」という言葉があるそうです。
最初聞いた時には「音消し」?なんだか変な話だなぁ・・・と全く笑っちゃう想
像をしておりましたが、よくよく聴きますと「音景」(音の景色)の事でした。
「音により景色を楽しむ」という言葉を短くして「おとけし」と表現していたん
ですね!

どういうことかというと、

私たちの周りには「音」が溢れています。
自宅にいても道路を通過する車や自転車オートバイ、歩行者の歩く音を聞けるか
もしれません。エアコンの音/冷蔵庫の音/掃除機の音、電子レンジの「チン」
なんて音もいっぱいいっぱいありますね。
こういった音の洪水から私たちは必要と思われる物だけを聞き分けているそうで
す。屋外でも風の音、におい、波の音、工場や商店から聞こえてくる様々な音が
あり、そこから今いる場所を想像するのが「おとけし」と呼ばれています。

「おとけし」を知るのは周囲の方からのガイドがあると何倍にも何十倍にも想像
力が膨らませる事ができますので、外を手引きをしていただいている時は周囲の
解説をなるべく御願いしちゃいます。

そんな「おとけし」というか、音で状況を知ることが、本の中でも書かれてたん
ですね。ということで、その本の内容から感じた音声ガイドとの関連性を述べて
みたいと思います。

ここから本の内容に触れます。
(ネタばれです)

少女を誘拐した二人組が母親へ身代金要求の電話を入れます。
この時に少女の叔父にあたる視覚障がい者の主人公が犯人と交渉しますが、電話
線を通じて伝わってくるアジト付近の音を聞き漏らさず、徐々に犯人を追いつめ
ていきます。
この手がかりは飛行機や、電車の通過した音であったり、テレビと思われる音
や、飲み物をかき混ぜる音、話しながら移動している犯人の足音や道路工事らし
き音などなど。
おそらく「手がかり」とはお世辞にも呼べないような物を積み重ねる事により、
ついにアジトを特定していきます。
当時の私には主人公がスーパーマンとしか思えない事ばかりでした。

でも、徐々にできるようになるんですね。
不思議なものです。

徐々に周囲の音に気を配り、できるだけ混雑している場所でも人とぶつからない
ですむようになりました。
そうして徐々に生活に慣れて見てみると、映画の中でも
セリフ、効果音、BGMを頼りにした「おとけし」とでもいいましょうか?
映画の景色を楽しむ事ができるようになって来たのです。

でも、だからといって音響やBGMで全てを理解するのは難しいです。
聞いたことのない音などは「これは何なのか」と手も足も出なくなります。
こういった場合に威力を発揮するのが、やはり「音声ガイド」の存在です。
もちろん、これで全て解決とはいきませんが、有効なツールだと思います。

できうれば、これは私の場合という私見ではありますが
セリフ等映画本来の情報を最大限いかしつつ、判断できない音や情景について
ガイドをつけてほしい。

判断できない音ってなんだろう、わからない情景ってなんだろう。
それは視覚障がい者によっても違うかもしれないし、これだということはできな
いのかもしれない。しかし、多くの人たちにとってわかりやすいガイドは確かに
存在する。
そして、そんなわかりやすいガイドを作るには、とにかく多くの作品に音声ガイ
ドを付けていき、試行錯誤しながら音声ガイドの高みを目指す事が必要なのかな
あなんて思ったりします。

毎年50本以上の音声ガイドをつけ続け、今年10年になるシティライツ、
そしてそのシティーライツ映画祭。そんなことも感じていただきたく

是非とも6月4日土曜日には江戸東京博物館へお運びいただきたいと思うわけで
あります。
御拝読ありがとうございました。


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